誰かいるの?
眼を開けようが、瞑ろうが何も見えない。
意を決し怖いけれど、光明真言を唱える。
一斉に蜘蛛が近寄る。
その中で、一際輝いている場所に眼を凝らす。
観音様だ。
30センチ程の九谷焼の観音様の御像がある。
お土産で頂いたか、定かではないが、何処にでも、よく見かける九谷焼の観音様!
必死で駆け寄り、御像を持ち上げ、元の場所に戻る。
自分の後ろに観音様の御像を置く。
もう、後は必死で眼を瞑り、慈救呪を唱え続ける。
何百も何千も。
もう既に何万も充分に超えているだろう。
雷鳴鳴り響く中、可笑しな音が聴こえてくる。
【ヒューバシッ、ヒューンバシッ】
何の音だろう?
【ヒューバシッ、ヒューンバシッ】
雷鳴と共に妙な音が聴こえている。
恐る恐る眼を開ける。
暗闇じゃない。
見えている。
自宅の佛壇の前に私は座っている!
後ろから何度も何度も、ヒューバシッっとまだ聴こえてきてる。
恐々顔の角度を変えないように眼を凝らすと、後ろから、肩や耳元に、何かが飛んできては、引き返している。
引き返す度、バシッっと言う。
巻物だ!
観音様が持っている巻物を縦に、私に投げては、引き戻し、投げては、引き戻しているようだ。
その度に激痛の頭痛が楽になるのが、わかるようになってくる。
巻物が投げられる音がする度に、痛みが楽になって行く。
有り難いと一心に想いながら、唱え続ける。
涙が止まらない。
かなり頭痛は改善され、少し心に問いかける事が出来るようになってきた。
心の中で、男とも女とも判別つかない声が語りかける。
『紙を敷きなさい』
声に従い、手近にあった半紙を数枚重ね、目の前、半畳に広げた。
その瞬間に突然のおう吐。
鼻水のような、痰の塊のような、黄緑色の膿のような液体を大量に吐き戻したのだ。
何度も何度も、何処から出てくるのか、わからない程、大量の具合の悪そうな黄緑色の鼻水のような液体、、、
中に黒茶色の蟻?
眼を凝らしてその中に在る、黒いような茶色の粒を善く見ると、蟻のような姿をしている。
何匹も死んでいるようで、ピクリとも動かない。
その間も、ずーっと、巻物は投げられ続け、どんどん視界は明るくなり、頭痛も減り、頭の中のミシミシする音も消えた。
半紙の上には黄緑色のスライム状の液体に赤茶色の3~4ミリの蟻のようなモノが50匹位、死んでいるようだ。
その蟲を眺めながら、お唱えを続ける。
すると、、、