パタパタと走り回る観音様!
まさに右往左往。
けっこう速い。
あっちの部屋から此方の部屋。
私の横もパタパタ行ったり来たり。
もう可笑しいんだね。
寝ずにお唱えし続け、既に70時間程の時間が経過している。
意識も朦朧。
夢かもしれない。
そうだ。
もう悪い夢を見てるってことでも善いじゃないか。
夢なら起きれば全て元通り。
もう、不思議がらなくてすむ。
可笑しな事が起きても、既に不思議と考えつかない。
もう、何でも信じられるし、何も疑う気力も体力も持ち合わせていないが、恐怖から、口で発する真言だけは止められない。
夢だとしたい心と、恐怖に支配された心は、葛藤し、ご真言を唱える事を止めたくないのだ。
やっと世界が元の日常の風景に戻り、佛壇の前ではあるが、スライムみたいな下呂温泉に、蟻の大群が沈んでいようと、割れるような頭痛から解放され、もう既に、ちょっと観音様が走ろうが、でんぐり返ししてようが、ビックリしない。
断っておくが、でんぐり返しは、していらっしゃらなかった。
例えだ。
私の周りを1メートル位の大きさになった、先程の観音様が走りまわっている。
もう、不思議と頭の痛みは、ほとんど、とれている。
もう既に思考が可笑しい。
観音様が走っていても、ボンヤリと
『観音様忙しそうね』
とか
『観音様ずいぶん大きくなれるのね』
とか、考えている。
雷鳴の響く音と、衝撃の吐物と、体力の限界とで、朦朧としている。
寝てないと見えないモノまで 見えてくるのは本当だ!
もう成るようになれ、だ。
観音様が私と向き合い、右手で、ある仕草を真似るよう、促される。
朦朧としながら、真似ると、頭痛はスッカリ無くなる。
『頭痛とる方法?』
尋ねると、観音様は頷く。
今度は左手を真似るよう、促される。
そのように、真似る。
左手の中指の先から、細く白い、まるで蜘蛛の糸のようなモノが、光の方向へと15センチ位延びて行く。
なにこれ?
心が洗浄されるように、軽くなっていく。
何これ?
もう一度尋ねると、先程の男女特定出来ない澄んだ声で、
『蟲封じ』
と教えられる。
蟲封じとは、指先から糸が出せねば、封じられてはおらぬ。と瞬時に伝わってくる。
ほう。
いつかは私もそんな呪法を授かりたいものだ。
と、とんでもない事を思う。
そうこうしている間も、この花を流せ、あの塩を此処から流せ、その酒を此処から撒け、など幾つもの指令を頂き、それをこなすうちに、どうやら地獄から帰還させて頂いたようです。
そのまま深い眠りへとつきました。
このあと、まる二日以上、寝っぱなしの木偶の坊で、あまりの反応の無さに、死体かと思われ、家族に警察を呼ばれ、生存を確認してもらったそうです。
また、後日コソーリ教えて頂いた話。
その時に確認に見えた警察の方のお話では、【全ての関節を曲げずに立ち上がった】ため、急いでお帰りになったそうです。
本当ならキョンシーみたいで楽しそうですね♪
17歳5月の想い出、地獄の一日体験が三日体験となりましたのです♡
次のお話は強深瀬橋を渡った地獄のお話をしようかのぅ。
いつになるかのぅ。
しっかし、強深瀬を渡る程の友人はおらんでのう。
ましてや、この橋を渡って、戻ったものはおらんらしいから、本当の話かも、わからんよ?
だから昔の人から人への伝承、人伝に聞いた話じゃよ。
よーく、ご真言を學んでおくんじゃぞぃ。